運動不足は高齢者だけでなく、社会全体で大きな問題となっています。平成25年の統計ですが、日本における運動不足による死者数は喫煙、高血圧についで3番目に多い数字との結果が出ています。具体的な数にすると、年間約5万人が運動不足が間接・直接の原因で亡くなっているとされています。これが高齢者に限定すると、さらに大きな影響が及ぶことになります。加齢による体の衰えが急速に進んでいく年齢ですから、運動によって維持・改善を図っていかないとどんどん健康が失われ、心身両面の不調を抱えてしまう恐れがあるからです。

運動不足がもたらす具体的な不調としてよく挙げられるのが、高血圧や肥満など生活習慣病の発症リスクです。先程のデータで、高血圧が運動不足よりも死亡リスクが高い原因として挙げられていましたが、運動不足が高血圧をもたらしてしまう面もあるわけです。さらに、高齢者の場合運動不足がもたらす血行不良が心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めてしまいます。こうなると、不調を通り越して命の危険をもたらしかねません。

骨や関節にもたらす影響も見逃せません。足腰の筋力が低下することで筋肉で体を支えにくくなり、骨・関節への負担が大きくなることで痛みを抱えやすくなります。とくに顕著なのが、膝の痛みです。運動不足によって骨・関節の不調を抱えた結果、ますます運動不足になってしまう…そんな悪循環に陥る恐れさえもあるわけです。ほかにも、外出する機会が減ることによるストレスの蓄積など、精神面の不調をもたらす面も無視できないでしょう。こうして見ても、高齢者にとって運動不足はかなり深刻な問題といえるのです。